硝化還元と硫酸還元
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はじめにタンクからタマゴの腐ったような臭いがしたり、底砂が灰色から黒い色になったりした経験はありませんか? 窒素循環(おさらい)硫酸還元について触れる前に、窒素循環についてのおさらいをザッとしてみましょう(詳しくは「硝化と脱窒」を見てください)。窒素循環とは、ご存じのように有機窒素→無機窒素(アンモニア)→亜硝酸→硝酸→窒素と回るサイクルの事です。本来は、循環というくらいなので生成された窒素からアンモニアが生成される過程(窒素固定)があるのですが、嫌気域で硝酸が無い場合に起きるため、ホビー環境では殆ど発生しないと思われます。 硫酸還元と酸化本題の硫酸還元です。硫酸還元には同化的硫酸還元と異化的硫酸還元があります。同化的硫酸還元とは、生物が必要とする有機硫黄化合物を作るための還元で、同化作用による硫酸還元のことをいいます。この有機硫黄化合物もやがて分解されるのですが、分解には2系統あって、亜硫酸をへて硫酸へ戻る好気的な分解と微生物によって嫌気的に分解され硫化水素として放出される嫌気的な分解に分けられます。同化的硫酸還元は生物がいれば日常的に行われているものなので気にする必要はないのですが、問題はもう一方の異化的硫酸還元です。
ところで、なんで硝酸が関係するのかというと、還元での酸化剤は 酸素>硝酸>硫酸 の順で使われるので硝酸(NO3)が存在しているうちは硝酸還元の方が優先されるわけです。つまり、硫酸還元が起きるのには嫌気層の無酸素領域で硝酸が枯渇し、かつエネルギー源となる有機物が存在する環境でのみ、硫酸イオン(SO42-)を使って有機物を酸化してエネルギーを得る硫酸還元細菌が育ち、硫酸還元が活発なるということです。 硫酸還元について極端な言い方をすると、硝酸還元が行われている層の下では嫌気性細菌により硝酸が消費されるため、硝酸がない状態となりまので有機物さえ存在すれば、硫酸還元が発生します(硝酸還元を促進するための脱窒素菌用の餌は硫酸還元菌の餌にもなことをおわすれなく)。実際には細かめの砂を厚め(5〜6cm以上)に引いていて硝化還元が上手くいっている場合、硝化還元がおこなわれているその直ぐ下の層では硫化鉄(FeS)が生成され砂が灰色から黒に変色していて硫化水素が生成されていることが認められると思います。深部で発生した硫化水素は砂をほじくり返さない限り臭うことは殆どありませんし、有機物もそれ程豊富では無いので適当なところで安定状態になるようです。 硫酸還元で生成された硫化水素は好気層では硫黄細菌により硫化水素H2S硫黄S硫酸H2SO4と酸化され
嫌気層では光合成硫黄細菌が硫化水素を光合成を使って炭素同化を行って、硫黄や硫酸を放出します。光合成硫黄菌は酸素があるところでは存在出来ないので無酸素域で光が届くところにしか存在出来ません。
また貧酸素領域では硫化水素H2Sから酸化により亜硫酸H2SO3やチオ硫酸H2S2O3が生成されますが、これも硫酸H2SO4に酸化されます。
硫酸は水素イオンを2つ持つ二塩基酸なのでpHが中性からややアルカリ側にある海水では生成された硫酸は解離して硫酸イオンとなります。
ちょっと話がそれてしまいましたが、硫酸還元が嫌気層の深層部で起きている場合は多量の有機物も送り込まれないでしょうから、許容範囲内であり、むしろ硝化還元の手助けになる事の方が多いと思います。しかし何かの拍子で条件が整ってしまうと、有機物の大量にある砂底の浅い部分で一気に硫酸還元が広がってしまい大量の硫化水素が発生する可能性があります。 告白私自身、順調に動いていたタンクで硫化水素の大量発生を引き起こしてしまいました。原因は強い水流もなく硝酸塩の濃度の低いリフジウムタンクに、何を血迷ったのかデニ××××という脱窒素菌用の餌とデニ××××という脱窒素細菌を投入してしまったことに起因するようです。推測ではあるのですがおそらく次の現象が起きたのではないかと思います。
これが自分なりの解釈なのだが、根拠としては
等々である。私は専門家では無いのでこれが真実なのかどうかは定かでは無いのだが、おおよそは正解だと思います。これは正常に動作している系をいじくり回してはいけないという教訓だと受け止めてはいるのだけれど、少々代償がでてしまった。 対策硫酸還元を止める(許容範囲内に納める)対策というと、硫酸還元が起きる条件を潰してしまえば良いことになります。一番手っ取り早く確実なのは、タンクをリセットしてしまう事だとは思うのですが、微生物とかをため込んだ底砂を廃棄する度胸はなかなかないものです。あきらめがつかないとはいっても底全面的に硫酸還元が起きてしまっていたら諦めてリセットしてしまった方が早いとはおもいます。ただどうしても諦めがつかないのならば、リセットをする前に次の事を試して見てはいかがでしょうか? もしかすると復帰出来るかもしれません。ただし、生体が入っているタンクでは生体が死でしまう可能性があるので避難させるか、生体第一としてリセットすることをお勧めします。
現実的な対策は、その1、その2ではないかと思います。その3、その4は補助的な対応でしょう。私自身の場合、その1の対応だけでなんとか落ち着いたようです。 実は...実は一寸嬉しくない話をすると、硫酸還元細菌は酸素が苦手なので素の状態で酸素に触れると死滅してしまうのですが、実際には硫酸還元菌が作り出した硫化水素や硫化水素と結合して作られた硫化鉄は酸素と非常に良く反応するため、周りにある酸素を全て還元してしまいます。これはどういう事かというと、初めは完全な無酸素域でしか活動が出来ない硫酸還元細菌は自分の周りに自分で酸素から身を守るシールドを作り出し、徐々に増殖しながら、貧酸素領域にも進出してゆくことができるということです(硫化鉄で身を守られた硫酸還元菌は有酸素域でも年単位で生存する事が出来るらしく、幾つかの固体が集まって硫化鉄に保護されているので、条件が整えば直ぐに活動を再開するそうです)。 |
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